社長ブログ 2023.01.10
【木造伝統工法住宅に、層間変形角1/30に注目】
建築基準法が制定されたのは、昭和25年5月24日です。
今から73年前に建築基準法がつくられました。日本は、地震が起きるたびに
大きく建築基準法に修正を加えられています。現在は、昭和56年に大きく
建築基準法が改正されました。(宮城沖地震がきっかけ。)
昭和56年以前の建物に対しては、住宅耐震補強補助金の申請できます。
建物を精密診断して、評点を1.0にまで上げる事が出来れば、耐震補強成立します。
問題は、建築基準法が制定される以前の建物をどの様に、補強していくか。
とても奥の深い、難題に直面する訳です。
昭和初期。100年近く経過した古民家には、石の上に建てられた建物が
今現在も数多く存在しています。耐震補強のかなめ的補強 基礎+土台+柱
柱脚固定が達成できない現実をどうするか。・・・・・?
この場合、費用掛けて、基礎を作り直して、耐震補強する事は、逆に、建物を
弱めてしまいます。何故なら、釘・金物補強がなされていないので、大きな地震の
揺れには、建物により強いダメージを与えてしまう。
難しい問題に直面する事になります。
そこで考えていく事は、地震が発生した時、建物が歪んで傾く事に注目して、
建物の層間変形角を調べていくと、どの様な現象が起きるか解って来ます。
建築基準法によると、層間変位角は、1/200を超えてはいけない規定があります。
解りやすく解説すれば、長さ3mの柱1/200。すなわち15mmを超える傾きは
よろしくないという規定になっています。
一方、建物が倒壊する場合の、柱の傾きに、注目していくと、1/30以上の傾き、
すなわち、3mの柱が、天端で10cm傾いた時には、倒壊する危険があるという事
です。ならば、層間変位角を1/30未満で、耐えうる構造にすれば、基礎の無い、
伝統工法住宅も倒壊しないレベルにまで、建物補強が出来る。
このような理論で、建築基準法をクリアしていない建物補強が可能となる考えです。
建物の傾き1/30を超えると、建物が壊れる。建物柱の層間変形角に、注目した耐震
補強方法を選択すれば、基礎が無くてもかなり効果のある耐震補強が出来る事が
理解できるようになります。
層間変形角の基準は、50年に一度程度の確率で生じる地震や風についての規定です。
建物を使用している間に一度は経験する可能性が高そうな災害については、
層間変形角を1/200以下にするよう求められています。
実務的には、基礎の無い建物。解りやすく表現すれば、石の上に立っている建物で
も、金物補強ではなく、層間変位角を1/30以内確保出来れば、建物は倒壊せず
人命にかかわるレベルでの耐震補強は、可能となります。柱3000mmの長さで、
1/30の寸法 すなわち、100mm以上傾くと倒壊します。
この様な制震工法を取り入れた、住宅耐震補強の考え方も大変重要になっています。
この様な制震工法に弊社は、取り組んでいます。
【参考資料】 最大層間変形角
建物が地震力を受けて水平方向に変形する場合の、各階の下階に対する相対的な水平変形を「層間変形」と呼び、その値を「階高」で割った値を「層間変形角」と呼びます。地震の水平方向の揺れにより、層間変形角は時々刻々変化しますが、継続時間の中での絶対値の最大値を「最大層間変形角」と呼びます。
この値は、建物の耐震安全性を評価する上で重要な指標となります。一般的な鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物では、大地震時で「最大層間変形角」を1/100程度以下になるように設計します。また、最大層間変形角が1/60~1/30程度に達すると崩壊状態となります。
一方、木造建築ではもう少し大きな値まで変形することが可能であり、大地震時でも1/30程度以下になるように設計します。
JSCA特集:木造建築の構造設計:用語解説 (jsca.or.jp)
https://www.jsca.or.jp/vol5/p4_2_sp_issue/200410/sp_issue0410-view7.php